ローディング

いのちを呼びさますもの —ひとのこころとからだ

ありかた

私は、変わりたい、新しい何かを始めたいといつも思っています。なのに、変わるとは何か、新しいとは何かと考えてしまう癖があります。

私のなかでは、「変わる」と「新しい何か」は、いつもセットになっていて、おもしろいかもとか、楽しいかもと思っても、周りを見渡せば似たようなことが現にたくさんあって、検索をすれば溢れる情報の中に、それこそ「違いや新しさ」を見つけることができなくり動けなくなっていました。

そんな時、真っ赤な地に金の文字、その装丁に惹かれて手にとったのがこの本。2018年の時点で、東京大学医学部付属病院循環器内科助教、医学博士である稲葉俊郎さんの本でした。

「わたし」という存在を作っている約60兆個の細胞の、ひとつひとつに想いを馳せるところから始まり、唯一無二の存在であることが語られます。
人間はそもそも変化するということが死ぬことも含めて内在化されていて、「新しい」とは、自分自身にとって「未知」であるということが重要で、未知の自分とは、新しい自分でもある。
また、他の誰でもないその人らしさが付与されることで、「新しい」ものになる。だからこそ、他の誰でもない自分自身と出会い続ける必要があると。

そして、人間は圧倒的に弱く危うい存在として人生の幕を開け、今、生き続けているということは、記憶があってもなくても、誰かに愛された体験が必ずある、だから誰もが無条件に自信を持っていいと続きます。

すーっと霧が晴れて、ああ、それでいいのか。と思えました。
そして、私にとって未知のことを始めてみました。これでいいのだ。


★おまけ
もうひとつ、響いた一節。
受け入れがたいことがあった時、未来の自分に可能性を賭けて、未解決のまま託すのも一つの方法。その時に大切なのは、葛藤は葛藤のまま、矛盾は矛盾のまま抱え続ける力。
一日一日を違う人として生きることは、過去の自分が抱えていた葛藤や矛盾を、現在の自分が新しい視点で見直し、未来へと受け渡していくこと。

いのちを呼びさますもの —ひとのこころとからだ

稲葉俊郎
出版アノニマ・スタジオ
初版2017年12月22日