世界中からお客様が訪れる、小さな町の小さなホテル。
お客さんから聞く知らない話。
小さな町しか知らない、ホテルマンの「ぼく」の、こみあげてくる遠くへ行きたい気持ち。
夢の中で知らない町に旅にでた「ぼく」は、毎日起こる、思いもよらないこと忘れられない瞬間をシャッターを押すように、大切に心にしまう。
夜が明けて、いつもと変わらない一日が始まり、今日もまたお客様がやってくる。
いつか本当にこの町を出て、世界中のお客様に会いに行けたら。
「ぼく」もホテルも、だれかの旅の忘れられない瞬間を刻んでいる。
それもきっと旅。
ここではない別のどこかへ旅に出たい、ここではない別の人生を始めてみたいと思わせてくれます。もし、旅の途中でこの本を手にとったとしたら、その瞬間から旅が、人生が愛おしいものになると思います。
リトグラフで描かれた無表情な絵が、どこまでも静かに心の奥行きを感じさせる美しい本です。
★おまけ
高校生の夏休み、親に嘘をついて長崎に2泊3日のひとり旅をしました。(もう時効だよね^^;;)島原で“まぼろしの邪馬台国”の作者であり、城山三郎さんの“盲人重役”のモデルである宮崎康平さんのご自宅に伺い、仏壇に手をあわせました。
それから雨の中バスで長崎市内へ。グラバー園でこの本の「ぼく」のように異国とあの時代に思いをはせ、如己堂で胸を詰まらせ、崇福寺〜興福寺〜諏訪神社と歩るき長崎の夏の暑さを初めて知りました。それは、私にとって「べつのどこか」に出会った旅でした。久しぶりに長崎に行きたいなぁ。
著 | みやこしあきこ |
---|---|
出版 | ブロンズ新社 |
初版 | 2018年11月7日 |