つい、口をついて出るこのせりふ。
はーい。
へーい。
ほーい。
わかりやしたー。
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ざんねん むねん。
ふかくの いたり。
しまった しまった くちおしや。
ふたりの子どもたちが、大好きだったこの本。20年ぶりくらいに読み返したら、これがめっぽうおもしろい!
どろぼう学校の、強面校長くまさかとらえもん先生と、かわいい?(これまた強面)生徒たちのお話です。
どろぼう学校の「何か泥棒をしてこい」という宿題に、生徒たちが持ってきたのは、自宅の革靴、アリの卵、先生の金時計……くまさか先生は眼を剥いてかんかん。
どろぼう学校の遠足は夜、となり村へ。
お金や宝物を持っていそうな一番大きなお屋敷、お城みたいに番兵がいて、ホテルみたいにたくさん部屋があって、頑丈な鉄の扉の建物に、ぬき足さし足しのび足でしのびこんだ、その時!さてさて、どこに忍び込んだのか?
ざんねん むねん。
ふかくの いたり。
しまった しまった くちおしや。
まぬけで、滑稽。だけど憎めない。
くまさかとらえもん先生の、歌舞伎役者のようなインパクトのある出で立ち、生徒たちの強面なのにコミカルな動きが魅力的です。
ありえない設定から生まれる、読む前からの期待感。想像できることではなく「ありえない」から始めると、「おもしろいこと」が始まるかも。
原作は乱暴に走り書きした紙芝居だったというこの話、作者の加古里子さんは、子どもたちに表面上のきらびやかさや豪華さではなく、内容の高いおもしろさを求めているということを教えられたそうです。
★おまけ
くまさかとらえもん先生の着物にクマの絵が描かれていたり、おまわりさんの制服の生地が英語の文字だったり帽子のバッジに御用と書かれていたり、この話を教えてくれたみみずくが、小さな窓からことの顛末を覗いていたり、細かな遊び心がなんともいえません。
著 | 加古 里子(かこさとし) |
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出版 | 偕成社 |
初版 | 1973年3月 |