ひとは、どこからきて、どこにいくんだろう。
きっと誰もが、心のどこかで思っていること。
そしてそれは、人に限らず、生きものや植物たちの命にも、星にも宇宙にもいえること。
トムテは赤い帽子をかぶり白いひげをたくわえた小人の妖精です。スウェーデンやノルウェーなどの北欧の国では、農家や仕事場などの納屋や屋根裏に住み、夜番をして家を守ると語り継がれています。
数え切れないほどの長い年月生きてきたトムテは、しんしんと冷える真冬の夜空の月を見上げて、「わしには まだ、どうも よく わからん」とつぶやきます。
みんなが寝静まったなか、食料小屋、牛小屋、馬小屋、羊小屋、鶏小屋、犬小屋、そして主人夫婦、そして最後に一番楽しみな子ども部屋を見まわります。そして子どもたちの寝顔を見ながら考えます。
ひとは、どこから くるのだろう。
こどもが おやになり、また その こどもが おやになる。
にぎやかに たのしく くらし、としおいて、
やがて いってしまう。
だが、どこへ いくのだろう。
生命の誕生と最期を科学的に知ったとしても、それが心に落ちる答えにはならない。得体のしれない宇宙の中で、何かのはずみで生まれ、旅がはじまり、いつかその旅を終えるだけのような気がします。それなら旅の時間は楽しむと決めた方がよさそうです。きっとトムテが守ってくれる。
19世紀のスウェーデンの詩人リードベリの詩に、現代画家のウィーベリが絵をそえたこの絵本、山内清子さんの訳が素晴らしいのです。美しく優しい日本語で、北欧の凍てつく冬の夜の時が止まったような空気や、トムテが住んでいる納屋の干し草の乾いた香り、宇宙の隅っこを感じさせてくれます。
★おまけ
2歳半になる孫が、棚に飾っていた「トムテ」の絵本をみて読んでという。難しいし絵が暗いからどうかな?と思いつつ読み始めると、じっと聞いている。続けて3回目読んでとリクエストされ、ページをめくるたびにトムテの足跡だねえ、犬はトムテが好き? あ、猫がいる。と気に入ったよう。
さて、私は、この絵本を買った覚えがない、正しくは思い出せない(笑)1981年10月5刷と書かれているから買ったのは結婚する前かした頃だと思うのだけど。
著 | ヴィクトール・リードベリ |
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絵 | ハラルド・ウィーベリ |
訳 | 山内 清子 |
出版 | 偕成社 |
初版 | 1979年11月1日 |