まだ、普通の家には時計がなかった頃の、韓国での話。
小さな女の子が、お母さんに隣のお店で時間を聞いてきてと頼まれて出かけます。
その店は、入り口に簾、天井から裸電球が下がり、唐辛子が釣られ、ハエたたき、くだもの、駄菓子などが色とりどりに並んでいます。踏石に寝そべる猫、店番のおじいさん。
日本にもおそらくあった雑貨屋さんの風景。
おじさんに時間を尋ねると、「よじはん」と教えてくれました。
女の子は、「よじはん、よじはん」と唱えながら店を出ます。
にわとりが水を飲んでいます。
ありがなにかを運んでいます。
とんぼが実畑の上を飛んでいきます。
おしろい花が咲いています。
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おしろい花の蜜を吸ったかどうかはわからないけれど、蜜の甘さが口に広がるような。
ただそこに流れているだけの、目の前の自然の営みに心が動く時間。
摘んだおしろい花をもって家に帰った時には、日はとっぷり。
「かあさん いま よじはんだって」
と伝える女の子と、女の子を迎える赤ちゃんを抱いたお母さんの表情、その家の奥で夕ご飯を食べている子どもたち。その、「ずれ」が、なんともほほえましくて。
絵のちからを感じる、特に「眼」がとても素敵な絵本です。
★おまけ
子どものころ近くのお寺が遊び場で、夕方になるとお寺の大きな釣り鐘を撞かせてもらうのが楽しみだった。子どもの頃って、時間って数字じゃなかったなぁ。
著 | ユン ソクチュン |
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絵 | イ ヨンギョン |
訳 | かみや にじ |
出版 | 福音館書店 |
初版 | 2007年5月25日 |