不老不死、何度でも生き返ることのできる命。それを手に入れたなら、幸せなのでしょうか。
王様の猫、サーカスの手品使いの猫、小さな女の子の猫……。誰かの猫として100万年、100万回生きたとら猫が、最後に生き返ったのは、誰の猫でもないのら猫。はじめて自分の猫になります。
死ぬのなんて平気で、自分のことが大好きなとら猫は、100万回生きたことを自慢し、たくさんのめす猫たちがお嫁さんになりたがりました。そんな時、自分のことに見向きもしない白い美しいねこに出会います。これまでのことをどんなに自慢しても、白いねこは「そう」と答えるだけでした。
自慢することをやめたとら猫は、白い猫にプロポーズします。そしてたくさんの子どもたちと一緒に時間を過ごし、いつのまにか、自分よりも、白い猫とこどもたちが好きになります。
年月が過ぎこどもたちは大きくなって独り立ちし、死ぬのなんて平気だったとら猫は、このままずっと二人で一緒にいたいと思いようになります。しかしある日、白い猫はとら猫の隣で静かに動かなくなり、トラ猫は初めて泣きます。誰かの猫だったとき、その誰をも愛することのなかったとら猫が、「何者でもない自分」を受け入れてくれる白い猫に出会い、愛し愛されることを知って、生き切ることができたのかもしれません。
時々、ふと手にとって読み返すと、そのたびに違った感情が湧いてくる不思議な物語です。何者でなくても、私もあなたもきっと誰かの愛しい存在です。
★おまけ
猫はちょっと苦手です。ちょっと前に、友だちの家で猫二匹と一晩留守番をすることになりました。一匹はゆったりめ、もう一匹は警戒心の塊で目があうと「しゃーーーーっつ」と威嚇してきます。その猫が納戸に入り込んでしまい、そこから出すのに悪戦苦闘、翌朝ぐったりでした。今のところ、猫は近づかずに見ているのが一番かわいいです。
著 | 佐野洋子 |
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出版 | 講談社 |
初版 | 1977年10月19日 |