お祭りのごちそうのための山菜を採りに山へ入った10歳のあやは、山にひとりで住んでいる山ンばに出会う。
そこには、いちめんに色とりどりの花。山ンばがいうには、その花はふもとの人間がやさしいことをひとつすると、ひとつ咲くという。
昨日、妹のそよがおっかあに祭り着をねだったとき、あやは「おらはいらねえから、そよサ買ってやれ」と言った。その時、その花は咲いた。
兄弟が弟を思いやりためた涙、男が身を呈して守った村、今も誰かが花を咲かせている。
誰かを思い、切ない時がある、辛抱する時がある、辛い時がある。でも、それは何一つ無駄にはならない、すべて花が咲く。だから大丈夫。目を閉じて静かに息をして咲いた花を感じて。
作者の斎藤さんは、咲いている花を見ると、「この花を咲かせているものは、一体なんだろう」という思いをずっと持たれていたそうです。
戦後、自分のために生きたい命を、みんなのために捧げることこそが、自分をさらに生かす事だと信じてその道を歩き始めたくさんの人々。この作品は、そういう人々への賛歌、そういう子どもたちが育ってほしいという祈りが込められ、滝平二郎さんの切り絵が、ものがたりにあたたかな命を吹き込んでいます。
★おまけ
息子が中学生のころ作った切り絵。絵が苦手な息子は苦労して仕上げた。で、最後になぜか蝶のなかに逆さまの日本地図を描いた。なぜかは未だに謎。
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著 | 斎藤隆介 |
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絵 | 滝平二郎 |
出版 | 岩崎書店 |
初版 | 1969年12月30日 |